ラスト・ダイアン 喪と踊る

俺の高校時代のあだ名は「ダイアン」だ。
お笑いコンビ「ダイアン」のでかい方と顔が似ているからとソフトテニス部に入った瞬間に先輩につけられた。
今でもその瞬間の風景をありありと覚えている。
俺の名前はあだ名がつけにくい名前であだ名がそれまで無く、高校に入って初めてつけられたあだ名だったから嬉しかった。高校生ぽい感じがよかった。
今にて思えばかなり不細工だということがわかって不服だったり、納得したり、まぁそんな感じだ。高校時代の友人しか呼ばないおれにとって唯一のあだ名である。

明日は高校時代の友人の結婚式だ。はっきり言ってかなり不安だ。
今日に至るまで職場やジムや美容室で結婚式があるということ、そしてスピーチを任されているということを話した。(俺にこんなに自分の不安を話せる人がいるのかと嬉しくなった)
ほとんどの人が「結婚式の参加楽しみやね」「スピーチすごいね、ドキドキするね」みたいな反応だった。
そう、結婚式の参加は楽しみなものなのだ。
もちろん、おれも楽しみだ。ただ、不安が圧倒的なだけだ。

俺の不安とはスピーチもそうなのだが、高校時代の友人や先輩と高校生ぶりに会うことだ。
むしろスピーチの不安があってよかったかもしれない。俺は今日一日スピーチのことを考えて練習して過ごした。(今日までスピーチのことは一切考えないで過ごした。少しでも考えだしてしまうと当日まで精密に考えてしまって苦しいからだ。)
今、書きながら思うのは今日は友人先輩と会うことと表立って不安にかられていなかった。ただ、伏流としてたしかにある。それを認めざる得ない。

今日は思い切ろうと思っている。
友人先輩と会うことのなにが怖いかと言えば友人たちと自分の現状の違いを知ったり、「最近、何してるん?」という問われることだ。
俺は31歳(32歳の世代)だ。俺と同じテーブルのごくたまに会うやつは大学の先生で結婚している。他にもこれから結婚があるだの、出張があるから来れないかもしれないだの、来年に海外出張だの、、、
順風満帆な人達ばかりだ。というか、結婚式というのはそういう表上、順風満帆な人達だけが来るものなのかも、、(事実、なにかつまづいてそうな人とは音信不通状態らしい。「つまづいて」と書くのも嫌だが、、)
かういう俺は、、?
俺は「フリーター」だ。俺はそれが心から恥ずかしい。以前、それを初めて会うネット友達にカミングアウトし、後日カウンセリングにてそれを報告したときに俺は泣いた。
30分ぐらい制御不能で泣いてしまった。泣きそうな予兆もなかった。意味がわからなかった。
ただ淡々とその日のことを報告していただけだった。むしろフリーターだと告白したその当日のほうが心が動いていた(はずだ)。
制御不能の涙と意味不明すぎるタイミングで頭が混乱していた。

閑話休題、、
話がそれ過ぎた。おれはフリーターだ。それを俺は言えるのか?
言ったらどうなる?引かれるような気がする。おれにはフリーターにそういう先入観がある。
しかし、相手が現在フリーターだと言ってきたらおれは特に何も思わないだろう。
いや、それは自分がフリーターだからかもしれない。ちゃんとした正社員などをしていたら相手を軽蔑していたかもしれない。。。

引かれて人が離れていきそうなのが怖い。そして、相手に気を使わせるのが申し訳ない。

変な感じにしたくない。
言い訳かもしれないけど、もう二度と会わないかもしれないから、それならその場しのぎの嘘で繕いたい。
もう二度と会わないのかもしれなかったら言えよという話でもあるが、、

おれは友達のためにダイアンを演じようと思っている。
みんなの記憶の中のダイアンじゃないければ引かれるような気がする。
いやしかし、そんなことあるか?みんないい大人だし変化した人なんて何人も見ていてるだろう。
本当に揺れ動いてる気持ちだ。典型的な”対象としての自我”の問題だ、、わかってはいるのに、、
こんなこと考えたくなかったから前日までなにも考えずに過ごしてきた。

ずっと後ろめたかった。避けていた。高校時代のライングループも招待をずっと放置している。
これからもずっと入らないだろう。
ダイアンはおれだ。
おれはダイアンであったことを否定しない。YESの烙印を押して穏やかに眠ってもらう。

スピーチだけは思い切ろうとは思っている。そこだけは思い切ろうと思っている。
友人がおれに託してくれたこと。おれが話す意味。
”普通”には合わせない、超個人的なスピーチをしようと思う。それだけはここに誓う。

二次会の誘いは断っている。。そのぶんも頑張ろうと思う。


追記:
この記事は時間の問題でジムに行く前とあとに分けて書いた。
ジムへ行く準備で結婚式のことを考えながら服を急いで取っていたら、服の棚の上に立てかけて置いてあったホワイトボードがバランスを崩しておれの脳天に直撃した。
まさしく新喜劇のタライのように脳天直撃だった。
なんだか本当のコメディなように感じた。おれは何を必死になっているんだと。

今日は二度目のヨガクラスだった。ヨガのクラスはたくさんあってたくさんの講師がいる。
帰り際に先生と少し談笑した。軽く話しておれがヨガに興味あることが伝わったみたいで色々と専門的なことを話せて嬉しかった。
どんどん沼にハマりそうだ。アシュタンガヨガについて話したときに色々と専門的なヨガ教室があるけど怖いところがあるからそこは気を付けてねと言われた。
「怖い?あぁ、怪我ですか?」怪我についての話をしていた流れだった。
「いや、怖い」
「ん?」
「怖い」
「あぁ、、」
カルト系のヨガについての話だと察した。
先生はアラフィフぐらいの人だと思う。多分、オウムの風評被害が強い時のヨガをよく知っている人なのだろう。たぶん、、

更衣室で例の水泳中国人と会った。
ラインを交換した。水泳をやめてから少し疎遠だったけど話せてよかった。また肩が回復したら一緒に泳ごうと言っておいた。
ヨガクラスにも誘っておいた。190㎝の巨漢なのできっと目立って面白い光景になるだろう。