小汚くて、臭くて、汗かきまくりのおじさん

今日のバイトで汚くて、臭くて、太りまくってて、冷や汗かきまっくてて喋ってるうちに何度も拭かないといけないおじさんが来た。
そのおじさんが不幸にも俺を見つけてしまい尋ねてきた。「ポイントカードの番号」と「レシートに書いてあるポイントカードの番号」が違うからどういうことなのか教えてほしいということだった。
よく話を聞いてみると、ポイントカードの番号が例えば「012-3456-789」だとしたらレシートには「0012-3456-789」と書いてあった。
ただの桁調整で書かれてる頭のゼロだとその場ですぐに思ったのだが、そのおじさんは、例えばスマホにポイントカードの番号を入力する際、どっちの番号を入力しなければいいかわからないから、番号が違って表示されている原因とどっちの番号が正しいのかしっかりと教えてほしいと言ってきた。
何をこだわっているんだとよくわかなかった。読んでる人もよくわからないと思う。そのおじさんの喋り方おどおどとしていて知的問題を抱えているのかとも思った。

おじさんはずっと冷や汗をかいては拭いてを繰り返していて本当に不潔な感じで嫌だったが、話を聞いているうちに何か迷惑をかけたくないような申し訳なさそうな感情を感じた。すごい必死な感じというか…。
それに喋り方が早口でおどおどとしていて少しおかしい感じはするものの、理路整然とはしている。懸念するところが俺の常識からは外れていたから、その人の話をちゃんと聞けていなかっただけだった。

おれは潔癖症で不潔なお客さんにはいつもできるだけ関わらないようにしているのだが、そのときはなぜかその人に優しくしたくなった。
今日も母の日前でかなり忙しかったけど、サービスセンターまで同行してその旨を係の人に伝えた。そこですぐに帰ってもよかったけどその人が納得いくまでその場に居たかったので居た。
サービスセンターの人はほんの少し戸惑っただけで、あとは淡々と対処し問題は解決した。サービスセンターには色んな種類の人間が来るのだろう。
問題解決後もその人は少し興奮した状態でツタヤのポイントカードで起きたトラブルを説明して、自分がどうしてカードとレシートの表記を気にするのか説明していた。
おれはそれもすごい親身な気持ちで聞いた。
聞いてみるとその人なりの多少というかかなり神経質ながらもたしかな理屈があった。(詳しくは忘れた)

俺は別に聖人君子になりたいわけでもないし、そういうことをアピールしたいわけではない。次にその人に会えば不潔だと感じてできるだけ関わらないようにするだろう。高確率で。
しかし、今日はたまたまその人の話を聞いて目を見たら、すごい困っていて、申し訳なさそうで、それでもなんとかしたいみたいな気持ちを感じたので手助けをした。
はっきり言って自分の投影があったということだ。俺も本当にその人を全く馬鹿にできないほど些細で神経質なところが気になって夜も寝れないほど苦しむことがある。なので、心的リアリティな次元ではそのおじさんを助けたというか自分を助けたということだ。


レシート関係でもう一つのエピソード。
レシートにはそれぞれに固有のレシートナンバーが割り振られ印刷されており、進物の郵送のときは伝票にそのレシートナンバーを書く事になっている。そのナンバーが最近のリニューアルで表記が変わった。
ある女性社員が伝票記入のためにレシートナンバーを探しているときになかなか見つけられないでいた。やっと見つかったときに「昔の長い番号をイメージして探してたからぜんぜん見つからんかったわ~」と喋っていた。
探し物のイメージが邪魔をして見つからなくなるなんてちょっと寓話的やなと思った。


ここところ出勤するといつも忙しいけど、母の日で忙しいなんてすごい皮肉やなと思う。
全国の幸福と思われる親子のために汗水垂らして最低賃金で働ているのである。
「母の日に何かあげたりするの?」とレシートナンバーの人に聞かれた。もちろん何もしないと答えた。その人は一緒に暮らしていないからそれも相まってプレゼントを贈るそうだ。
俺も一緒に暮らしていないことを言うと何かを察したのか自然と話がウヤムヤになった。そういう時の女性の話運びや声の調子は一流詐欺師より技巧的だろう。思い出そうとしてもどうウヤムヤになったか思い出せない。


別の部門のたまに喋る主任とちらっと顔を合わせたときに「楽しいか?」と聞かれた。
こういう質問は本当にドキっとするというかとにかく嫌いだ。後ろめたくなるし、情けないし、馬鹿にされているような気持ちになる。
(フリーターで)楽しいか?みたいなそんなニュアンスに聞こえてしまう。昔からそうで、マクド時代、居酒屋時代、いろんなところで40~50代のおじさんにその質問を投げかけられてきた。
今回は「楽しいですよ。○○さん(若い女性社員)と話したりして――」みたいな感じでほん~~~~~の少しだけ自然と答えられた気がする。
相手の人は「浮気ものやな~」と言ってきた。前任社員もその前の社員も美人だったのでその脈絡から軽くいじってきているのだろう。冗談とわかるけどちょっと嫌だな。


ふとデパートの一階の匂いを久しぶりに嗅ぎたいなと思った。
もう一年以上も女性とプライベートで関わっていないのでそういうところにも行かなくなった。寂しいぜ。