トカトントンと金閣寺 太宰治と三島由紀夫 その他、最近読んだ本をざっと。

雑然と小説を読み散らかしてるところあるから、ここでいったん深呼吸、ということで
キーボードの勢いのまま、感想なりなんなりを書いていこうと思う。

全部、太宰治


・正義と微笑、パンドラの匣
二作品ともおなじような読後感で、さすがにかわいいといった感じ。愛され美少年というか、太宰治が幼少期に自己演出してた姿の理想形がこれなんじゃないか?と思いつつ、どうなんやろ。
無垢というかイノセントというか、生意気なところも怒りも憎しみも打算も全てが愚直でかわいいわい。
おれの思春期もこんなふうに見ることもできるのかな。いや、それは、、、
ヴィヨンの妻にある通り、太宰も世間に汚されたのかな。おれは、、、?いや、それは、、、


・親友交歓
これに出てくる主人公の親友の破天荒な男。こいつが、おれの友達(友達でもないけど)に似ていて、なんとも言えない感じがした。
孤独感。
主人公が感じた漠然とした孤独感、破天荒な男のあまりにもの卑しさの発露に見る自分の内なる卑しさ。それに気づきつつひた隠しにする陰性さに孤独感。

トカトントン
金閣寺に似ているような内容。あまりにも面白くて読んでるときに眼鏡が曇りました。極寒。


「あのトカトントンの幻聴は、虚無(ニヒル)さえ打ち壊してしまうのです」(ヴィヨンの妻、新潮社、p59)

「何故なら金閣そのものが、丹念に構築され造形された虚無にほかならなかったから。」(金閣寺、新潮社、p194)
「ふしぎなことだ。私は虚無とさえ、連帯感を持っていなかった。」(金閣寺、新潮社、p166)

トカトントンは戦争でのショックからの幻聴が始まる。ちょっとPTSDぽい。
金閣寺は吃音で土壌ができて、ウイコの事件から口火を切る。

両方とも、ショックな事件で自分の感情がうまく出てこなくなったせいで虚無になり、また虚無とさえ連携が取れなくなる。(虚無という言葉に手垢がつきすぎているということだろう。)



「身を殺して霊魂をころし得ぬ者どもを懼るな、身と霊魂とをゲヘナにて滅し得る者をおそれよ【この場合の「懼る」は、「畏敬」の意に近いようです。】」(ヴィヨンの妻、p63)

三島由紀夫切腹にこの言葉は刺さるし、金閣寺自体にもこの言葉は刺さる。
金閣寺での主人公は金閣寺放火→生きよう→執筆だが、それで、全てが解決できたはかなり怪しい。根本の感情の素直さ問題がどうなっているかはまだわからない。

金閣寺には一応の解決があり、トカトントンには解決はない。
なんだか金閣寺がすごく嘘くさく感じてきた。嘘くさいというか、放火→生きよう→執筆からの日常は?と思う。
日常の辛さに当たってどうなるかが本当だし、金閣寺の主人公の本当の身と霊魂の滅しはセックスできなかった女性に自分がセックスできなかった理由を事細かに告白することだったんじゃないかなと思えてきた。
多分、放火よりきつい。

・父
「義。
義とは?
その解明はできないけれども、私は意地になって地獄にはまり込まなければならぬ、その義とは、義とは、ああやりきれない男性の、哀しい弱点に似ている。」

なんか、ぬるくない?
別にいいけど。

・母
津軽ぽい。序盤は落語ぽい。さすがコメディアン。
太宰の母性欲求への観が最後のほんのり出てる。(母性≠母≠女性)

母は母でも普通の女性が母性欲求の対象になったらそれは聖母なんかな~。
無償の愛を宿してるとしたらそれは神属性ではあるか。みたいな最後でした。


ヴィヨンの妻
太宰のNTR人間失格を読んでいたらまぁ、あぁ、、って感じやと思う。
人生経験の不足の感あり。


・おさん
家庭から逃げて愛人と心中する話。まぁ、あぁ、、といった感じ。
ブログが長くなってるから適当やけど、普通に話せ言われたら10分は喋れるぐらいの名作やとは思いまっせ。

・家庭の幸福
「まず、これでよし。大過なし。

役人のほうは、その大半、幼にして学を好み、長ずるに及んで立志出郷、もっぱら六法全書の糞暗鬼に努め、質素倹約、友人にケチと言われても馬耳東風、祖先を敬するの念厚く、亡父の命日にはお墓の掃除などして、大学の卒業証書は金色の額縁にいれて母の寝間の壁に飾り、まことにこれ父母に考、兄弟には友ならず、朋友は相信ぜず、お役所勤めても、ただもうわが身分の大過無きを期し、ひとを憎まず愛さず、にこりともせず、ひたすら公平、紳士の亀鑑、立派、立派、すこしは威張ったって、かまわない、と

これまで一つも間違いをしでかさず、模範的なサムシング。

なんの罪もない。

曰く、家庭の幸福は諸悪の元。」

結局、最後は自分を擁護するんかい!

この最後の文から桜桃に流れるのはナイス編集。

・桜桃
子どもより、親が大事。
悲しいねえ。

・畜犬談
びびりなのに、強がり。生意気なのに、真面目。いつも卑下してるのに、自尊心が高い。
ブログでうまく言えないな~。
アフォリズム系じゃない作家はツイッターでもブログでも魅力をうまく伝えられないね。
村上春樹も難しいし。
物語の骨子は面白いし、かわいらしさも、抜群で、正義と微笑、パンドラの匣と根本は似てるような感じかな?
若い人にやっぱり正義と微笑かパンドラの匣がいいと思うけど、普段、小説読まない人に太宰治を勧めるなら畜犬談から~~~なんだろう。
まだ人間失格なみの暗い短編に出会ってないや。性格の悪いこと考えるな。

・おしゃれ童子
ファッションの黒歴史は誰しもがあるよねと。ほとんどはかわいい物語。

最後の詩はどういう意味?
「落人の借着すずしく似合いけり。この柄は、このごろ流行りと借着言い。その袖を放せと借着あわてけり。借着すれば、人みな借着にみゆるかな。」味わうと、あわれな狂句です。

ただ、なんとなく、あわれ。最後2ページで一気に暗くなります。それはなくてもよかったんじゃないかなあ。



以上です。寒ぃ。